慢性前立腺炎に衝撃波治療は効く?CP/CPPSに対するLi-ESWTのエビデンスを尿道炎・前立腺炎を年間1,000例以上診療する泌尿器科専門医が解説

「慢性前立腺炎に衝撃波治療があると聞いたけれど、本当に効くのか」

「薬を何か月も飲んでいるのに、会陰部の痛みや違和感が残っている」

「自由診療と聞くと、医学的な根拠があるのか少し不安」

慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)の診療では、このような質問をよく受けます。

大阪梅田紳士クリニックでは、尿道炎と前立腺炎を合わせて年間1,000例以上診療しています。その中には、抗菌薬や鎮痛薬などの治療を続けても会陰部痛や骨盤の違和感が残り、何か月、何年と悩んでいる方もいます。

こうした難治例で治療選択肢の一つになるのが、低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)です。

Li-ESWTは、日本では保険適用外で、自由診療として行われています。ただ、だからといって医学的な根拠が乏しい治療というわけではありません。

実際には、Li-ESWTを行った患者さんと、実際の衝撃波を照射しない対照群を比べた臨床試験が複数あります。さらに2025年の米国泌尿器科学会(AUA)ガイドラインでは、中等度の推奨、根拠の質はGrade Aと評価されています。[1]

このGrade Aという評価は、CP/CPPSに対する他の代表的な治療と比べても高い部類です。

Li-ESWTとはどんな治療?

Li-ESWTは、Low-intensity Extracorporeal Shock Wave Therapyの略で、日本語では「低強度体外衝撃波治療」と呼ばれます。

体の外から低いエネルギーの衝撃波を照射する治療です。

「衝撃波」と聞くと、腎結石を砕く治療を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、CP/CPPSに用いるLi-ESWTは、結石を破砕する治療とは目的もエネルギーも異なります。

CP/CPPSでは、会陰部から前立腺周囲に向けて衝撃波を照射します。代表的な臨床試験では、週1回、4週間、1回3,000発という方法が使われています。[2]

身体を切ったり、前立腺に針を刺したり、血管内へカテーテルを入れたりする治療ではなく、通常は麻酔を使わず外来で行います。

なぜ慢性前立腺炎に衝撃波を当てるのか

「前立腺炎なのに、なぜ衝撃波なのですか?」

診療でもよく聞かれます。

Li-ESWTがCP/CPPSに作用する仕組みは、まだ完全には分かっていません。局所の血流への作用、炎症反応の調整、痛みを伝える神経への作用、骨盤底筋の緊張への影響など、複数の仕組みが関係していると考えられています。

そもそもCP/CPPSは、単純に「前立腺に炎症が残っている病気」ではありません。

骨盤底筋の緊張や神経の過敏化、慢性疼痛の仕組みなどが症状に関係している患者さんもいます。

そのため、薬とは異なる方向から慢性的な痛みに働きかける治療としてLi-ESWTが研究されてきました。

実際の臨床試験ではどうだったのか

CP/CPPSに対するLi-ESWTの代表的な研究の一つが、Zimmermannらが2009年に報告した臨床試験です。[2]

60人のCP/CPPS患者を、実際にLi-ESWTを行う群と、見かけ上は同じ処置を行うものの実際には衝撃波を照射しない対照群に分けて比較しました。

Li-ESWT群では、週1回、4週間、1回3,000発を照射しています。研究は無作為化・二重盲検で行われました。

ここに「Zimmermannら 2009年 臨床試験」のFigureを挿入

その結果、Li-ESWT群では対照群と比べて、痛み、QOL、排尿状態が有意に改善しました。[2]

この研究で重要なのは、単に「治療を受けた患者さんが良くなった」という結果ではないことです。

実際の衝撃波を照射しない対照群と比べても差がみられたため、Li-ESWTそのものに治療効果がある可能性を示した研究といえます。

複数の研究をまとめても、特に「痛み」の改善がみられている

一つの研究だけでなく、複数の臨床試験をまとめて評価した研究もあります。これを「メタ解析」といいます。

2024年のメタ解析では、Li-ESWTを受けたCP/CPPS患者では、対照群に比べて痛みやNIH-CPSIという症状スコアがより改善していました。[3]

さらに2026年には、8つのランダム化比較試験、計455人をまとめたメタ解析が報告されています。

この研究でもLi-ESWTによる症状改善が確認され、改善の中心となっていたのは痛みでした。[4]

一方で、研究によって使用する機器や衝撃波の種類、照射条件には違いがあります。

したがって、Li-ESWTの有効性を支持するデータはかなり蓄積してきていますが、どの機器を、どの強さで、何回使用するのが最もよいのかについては、まだ結論が出ていません。

AUAでは、Li-ESWTの根拠の質はGrade A

Li-ESWTの現在の位置づけを考えるうえで重要なのが、2025年に公表されたAUAの男性慢性骨盤痛ガイドラインです。

AUAでは、Li-ESWTについて次のように記載しています。

“In patients with CP/CPPS, clinicians should discuss low-intensity extracorporeal shockwave therapy.”

日本語では、

「CP/CPPS患者に対して、低強度体外衝撃波治療を治療選択肢の一つとして提示し、患者さんと相談しながら検討すべきである」

という意味合いです。

そして、この推奨はModerate Recommendation(中等度の推奨)、Evidence Level Grade Aです。[1]

Grade Aは、比較的質の高い研究がそろっており、治療効果を判断するための根拠の質が高いことを示します。

AUA 2025で代表的な治療を比べると、次のようになります。

治療推奨の強さ根拠の質
Li-ESWT中等度Grade A
α遮断薬中等度Grade B
TENS中等度Grade B
鍼治療中等度Grade B
NSAIDsなどの抗炎症薬条件付きGrade B
タダラフィル条件付きGrade B
植物製剤条件付きGrade B
神経障害性疼痛薬条件付きGrade C
CBT条件付きGrade C

Li-ESWTはCP/CPPSに対する治療の中でも、根拠の質が高い部類に入ります。

もちろん、Grade Aだから「すべての患者さんがLi-ESWTを受けるべき」という意味ではありません。α遮断薬は排尿症状がある患者さん、骨盤底への治療は骨盤底筋に問題がある患者さんというように、それぞれ治療する対象が異なります。

ただ、少なくともLi-ESWTは、「まだ十分な研究がない実験的な治療」ではありません。

現在のCP/CPPS治療は「症状に合わせて選ぶ」

現在の海外ガイドラインでは、CP/CPPSを「慢性前立腺炎だから同じ薬をずっと飲む病気」とは考えていません。

例えば、排尿症状が目立つ患者さんではα遮断薬、痛みに対しては抗炎症薬などを検討します。AUAではタダラフィル、植物製剤、TENS、鍼治療なども治療選択肢として挙げられています。[1]

骨盤底筋の緊張や圧痛が強い患者さんでは、骨盤底への治療が重要になることもあります。

「慢性前立腺炎なら何を飲むか」ではなく、「今、何が症状を残しているのか」を考えて治療を組み合わせる、というのが現在の方向性です。

「慢性前立腺炎=抗菌薬を長期間」でもない

日本では、慢性前立腺炎に対して抗菌薬やセルニルトンなどを長期間処方されている患者さんを診ることがあります。

これらの治療がすべて間違いという意味ではありません。

セルニルトンを含むpollen extractにも臨床研究があり、AUAでも植物製剤はGrade Bの根拠を持つ治療選択肢として挙げられています。[1]

抗菌薬については少し複雑です。

EAUでは、これまで治療を受けておらず、症状が始まってから1年未満の前立腺痛症候群では、少なくとも6週間の抗菌薬治療を推奨しています。一方で、患者さんごとの症状に応じた治療を行うことも同時に重視されています。[5]

ですから、「CP/CPPSには抗菌薬は意味がない」と一括りにするのも正確ではありません。逆に、感染が確認されておらず、抗菌薬を繰り返しても改善しないのに、「症状があるからまだ菌が残っているはず」と同じ治療を続けるのも適切とは限りません。

欧州泌尿器科学会でもLi-ESWTの治療後3か月程度までの短期的な効果を評価

EAU 2026でも、前立腺痛症候群に対する体外衝撃波治療について、「治療後3か月程度までの短期においては有効である可能性が高い」と評価しています。

その根拠はLevel of Evidence 1bです。[5]

簡単にいえば、ランダム化比較試験に基づく比較的質の高い根拠がある、ということです。

AUAだけでなく、EAUでも臨床試験に基づいて短期的な有効性が評価されています。

一方、24週まで追跡すると対照群との差が明確でなくなった研究もあり、効果がどのくらい長く続くかについては、まだ検討が必要です。

当院19例でも、痛みとQOLが改善

大阪梅田紳士クリニックでは、6か月以上の保存的治療を受けても症状が残っていたCP/CPPS患者19例にLi-ESWTを行い、その治療成績を2026年に国際医学誌『Translational Andrology and Urology』に報告しました。[6]

治療は週1回、4週間。1回3,000発、エネルギー密度0.25〜0.35 mJ/mm²、8Hzで行っています。

評価項目治療前治療後
NIH-CPSI総スコア25.921.6
痛み11.59.2
QOL10.18.5
排尿症状4.33.9

NIH-CPSI総スコア、痛み、QOLは有意に改善しました。一方、排尿症状には有意な改善を認めませんでした。[6]

これは、海外の臨床試験やメタ解析で報告されている「特に痛みが改善する」という傾向と似ています。

ただし、当院の研究は19例の単施設・後ろ向き観察研究で、対照群もありません。当院の研究だけでLi-ESWTの有効性を証明するものではありません。

一方、海外の比較試験でみられている傾向が、日本の実臨床でも確認された点には意味があると考えています。

何回くらい受けるの?痛みや副作用は?

代表的な臨床試験では、週1回×4回という方法が使われています。[2]

当院でも基本的に週1回、4回を1クールとしています。

CP/CPPSに対するLi-ESWTは、通常は麻酔を使わずに行われます。2009年の臨床試験でも麻酔なしで会陰部から照射され、副作用は報告されませんでした。

また、2024年のメタ解析でも、非侵襲的で安全性の高い治療として評価されています。[3]

もちろん、医療行為ですので「絶対に副作用がない」という意味ではありません。

どんな患者さんでLi-ESWTを検討するのか

当院では、CP/CPPSと診断されており、特に会陰部や骨盤周囲の痛みが残っている患者さんで、従来の薬物治療で十分な改善が得られていない場合にLi-ESWTを検討しています。

その前に、現在も尿路感染症や性感染症がないか、他の泌尿器科疾患などで症状を説明できないかを確認することも大切です。

「慢性前立腺炎だから、とりあえず衝撃波治療」ではありません。

診断を行い、現在の症状とこれまでの治療経過を整理したうえで選択する治療です。

よくある質問

Q. 慢性前立腺炎に衝撃波治療は本当に効きますか?

複数のランダム化比較試験やメタ解析で、Li-ESWTによる症状改善が報告されています。特に痛みについては比較的一貫した結果があり、2026年のメタ解析でも改善の中心は疼痛でした。[3,4]

AUA 2025でも、中等度の推奨、根拠の質はGrade Aです。[1]


Q. 自由診療なのに医学的根拠はあるのですか?

あります。

Li-ESWTは日本では保険適用外ですが、保険適用外であることと、医学的なエビデンスがないことは別です。

複数の比較試験やメタ解析があり、AUA・EAUのガイドラインでも取り上げられています。[1,5]


Q. 排尿症状にも効きますか?

改善した研究もありますが、痛みほど結果は一貫していません。

当院の19例でも、痛みとQOLは有意に改善しましたが、排尿症状には有意な改善を認めませんでした。[6]


Q. カテーテル治療とLi-ESWTでは、どちらがよいですか?

CP/CPPSに対して、経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を行う医療機関もあります。確かに、2024年には44例の後ろ向き研究で症状改善が報告されていますが、誰がどのような診断プロセスでCP/CPPSと診断したのかが明確ではない点や、プラセボなどの対照群が設定されていない点などは、この論文を解釈するうえで注意が必要です。[7]

一方、Li-ESWTには複数のランダム化比較試験やメタ解析があり、AUA・EAUのガイドラインでも有効性が評価されています。[1,3-5]

そのため現時点では、CP/CPPSに対するエビデンスの蓄積や海外ガイドラインでの位置づけはLi-ESWTの方が明確です。


Q. セルニルトンよりLi-ESWTの方が効くのですか?

単純にどちらが優れているとは言えません。

セルニルトンを含むpollen extractにも臨床研究があり、AUAでは植物製剤は条件付き推奨、根拠の質はGrade Bです。一方、Li-ESWTは中等度の推奨、根拠の質はGrade Aです。[1]

したがって、AUAが評価したエビデンスの質についてはLi-ESWTの方が高いという違いがあります。ただし、これは両者を直接比較してLi-ESWTの方が優れていることを示したものではありません。


Q. 抗菌薬を何度飲んでも治らない場合はどうすればよいですか?

まず、現在も感染が残っているのかを確認する必要があります。

感染が否定的で、抗菌薬を繰り返しても改善しない場合には、骨盤底筋や慢性疼痛など、感染以外の要素を考える必要があります。

CP/CPPSでは、症状が始まった原因と、現在その症状を維持している原因が同じとは限りません。

まとめ|Li-ESWTはCP/CPPS治療の中でも根拠の質が高い選択肢

慢性前立腺炎/CP/CPPSの治療は、「慢性前立腺炎だから同じ薬を長期間飲み続ける」という単純なものではありません。

現在の海外ガイドラインでは、排尿症状、疼痛、骨盤底筋の問題など、患者さんごとの症状に応じて治療を選び、必要に応じて組み合わせていく考え方が中心です。

その中でLi-ESWTは、複数のランダム化比較試験やメタ解析で有効性が検討され、AUA 2025では中等度の推奨、根拠の質はGrade Aと評価されています。[1]

α遮断薬、NSAIDs、タダラフィル、植物製剤などがGrade Bであることと比べても、Li-ESWTはCP/CPPS治療の中で根拠の質が高い部類に入ります。

EAUでも、ランダム化比較試験に基づいて短期的な有効性が評価されています。[5]

一方で、すべての患者さんに同じような効果が得られるわけではなく、最適な照射条件や長期的な効果については、まだ検討が必要です。

大阪梅田紳士クリニックでは、尿道炎と前立腺炎を合わせて年間1,000例以上診療しています。

慢性前立腺炎/CP/CPPSについても、感染の有無、これまでの治療歴、痛みの部位や程度、排尿症状などを確認したうえで治療方針を検討しています。

従来の治療を続けても会陰部痛や骨盤痛が残っている患者さんには、低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)を治療選択肢の一つとして提供しています。

参考文献

  1. Lai HH, Pontari MA, Argoff CE, et al. Male Chronic Pelvic Pain: AUA Guideline: Part II Treatment of Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome. J Urol. 2025;214(2):127-137.
  2. Zimmermann R, Cumpanas A, Miclea F, Janetschek G. Extracorporeal shock wave therapy for the treatment of chronic pelvic pain syndrome in males: a randomised, double-blind, placebo-controlled study. Eur Urol. 2009;56(3):418-424. doi:10.1016/j.eururo.2009.03.043.
  3. Labetov I, Vaganova A, Kovalev G, Shkarupa D. Extracorporeal shockwave therapy in treatment of chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome: systematic review and meta-analyses. Neurourol Urodyn. 2024;43(8):1924-1937. doi:10.1002/nau.25524.
  4. Wu MJ, Kao CC, Yang MH, Tsao CW, Chen CL. Optimizing the Use of Extracorporeal Shock Wave Therapy for CP/CPPS: A Modality-Based Systematic Review and Meta-Analysis Comparing Focused and Radial Devices. J Clin Med. 2026;15(3):1270. doi:10.3390/jcm15031270.
  5. European Association of Urology. EAU Guidelines on Chronic Pelvic Pain. 2026 Edition.
  6. Hirayama T, Matsuoka Y, Oae M. Low-intensity extracorporeal shockwave therapy for chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome: a retrospective single-center observational study in Japan. Transl Androl Urol. 2026;15(9):342. doi:10.21037/tau-2026-0381.
  7. Kubo T, Shibuya M, Miyazaki K, et al. Transcatheter Arterial Embolization for Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome: A Retrospective Study of 44 Patients. Cardiovasc Intervent Radiol. 2024;47(10):1348-1355. doi:10.1007/s00270-024-03842-6.