「慢性前立腺炎と言われて薬を飲み続けているけれど、なかなか良くならない」
「抗菌薬やセルニルトンを使っても、会陰部の痛みや違和感が残っている」
「衝撃波治療があると知ったけれど、自分が受けるべき治療なのか分からない」
当院には、このような経過で受診される患者さんが少なくありません。
慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)の診療では、いきなり次の治療へ進むのではなく、まず今の症状を何が残しているのかを整理することが大切です。
大阪梅田紳士クリニックでは、尿道炎と前立腺炎を合わせて年間1,000例以上診療しています。慢性前立腺炎についても、検査で感染症や他の泌尿器科疾患を確認し、従来治療を行ったうえで、それでも特に会陰部痛や骨盤痛が残る患者さんでは低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)を検討しています。
また、当院で行ったLi-ESWTの治療成績は、倫理審査委員会の承認を受けた臨床研究として解析し、2026年に国際医学誌『Translational Andrology and Urology』へ原著論文として報告しました。[1]
本記事では、当院ではどのように検査し、どのような治療を経て、どの段階で衝撃波治療を検討するのかを、実際の診療の流れに沿って解説します。
慢性前立腺炎では、まず「今の症状」を整理します
慢性前立腺炎という病名から、「前立腺に細菌や炎症が残っている病気」と考える方は少なくありません。
しかしCP/CPPSでは、感染が確認されないにもかかわらず、会陰部、下腹部、陰茎や陰嚢周辺の痛みや違和感、排尿症状、射精時痛などが続くことがあります。
その背景には、骨盤底筋の緊張、神経の過敏化、慢性疼痛の仕組みなど、複数の要因が関係していると考えられています。
一方で、尿路感染症や性感染症、前立腺肥大症など、別の病気でも似た症状は起こります。
そのため当院では、他院ですでに慢性前立腺炎と診断されている場合でも、痛む場所、症状が続いている期間、排尿症状、射精時痛、これまでの検査内容、使った薬とその反応をあらためて確認します。
慢性前立腺炎がなぜ長引くのかについては、関連記事「慢性前立腺炎が治らないのはなぜ?」で詳しく解説しています。
当院で行う主な検査
慢性前立腺炎では、すべての患者さんに同じ検査を行うわけではありません。症状やこれまでの検査歴に応じて、必要な検査を組み合わせます。
| 検査 | 主な目的 |
|---|---|
| 尿定性・尿沈渣検査 | 白血球や血尿を確認し、尿道炎・尿路感染症や他疾患の手掛かりを探る |
| 尿培養検査 | 一般細菌による尿路感染症、細菌性前立腺炎の可能性を確認する |
| 前立腺エコー | 前立腺の大きさや形態を確認し、必要に応じて残尿も評価する |
| 性感染症検査 | クラミジア、淋菌、Mycoplasma genitaliumなどを確認する |
| ウレアプラズマ検査 | 症状や経過に応じて感染の可能性を確認する |
当院では尿道炎・性感染症も多数診療しているため、慢性前立腺炎と診断されている患者さんでも、感染症が十分に除外されているかは重要な確認点です。
ウレアプラズマについては、CP/CPPSの原因として確立しているわけではありません。全例で必須の検査ではありませんが、尿道症状が続いている方や、一般的な性感染症検査で原因が分からない場合には、症例に応じて確認します。
当院の臨床研究でも、尿検査と尿培養を行い、感染所見や骨盤痛を説明できる他の泌尿器科疾患がないことを確認したうえで、泌尿器科専門医がCP/CPPSと診断しました。[1]
衝撃波治療の前に行う主な従来治療
「衝撃波治療を受けたい」と来院される患者さんもいますが、当院では最初からLi-ESWTを行うわけではありません。
CP/CPPSでは、痛み、排尿症状、感染の可能性、性機能、慢性疼痛の要素などをみながら治療を組み合わせます。
| 治療 | 主な位置づけ |
|---|---|
| セルニルトン | 慢性前立腺炎で広く用いられる植物製剤。保存的治療の一つ |
| α遮断薬 | 尿が出にくい、勢いが弱い、残尿感があるなど、排尿症状が目立つ場合に使用 |
| タダラフィル5mg | 排尿症状やEDを伴う患者などで検討。CP/CPPSの治療選択肢の一つ |
| 抗菌薬 | 尿培養や性感染症検査で感染が確認された場合に使用。治療歴や発症時期によって初期治療として検討することもある |
| 漢方薬 | 会陰部不快感、排尿症状、慢性的な疼痛などに応じて補助的に使用 |
| SSRIなど | 慢性疼痛、不安、睡眠障害などが症状に関係している場合に検討 |
AUA・EAUガイドラインでも、CP/CPPSは一つの治療だけで対応するのではなく、患者さんの症状に応じて治療を選ぶことが重視されています。[2,3]
例えば、排尿症状が目立つ患者さんではα遮断薬やタダラフィル、感染が確認されれば抗菌薬を使用します。
感染所見がなく、抗菌薬を繰り返しても改善しない場合には、感染以外の要素にも目を向けます。
症状が始まった原因と、現在その症状を維持している原因が同じとは限らないからです。
当院における慢性前立腺炎/CP/CPPS診療の流れ
当院では、他院ですでに検査や治療を受けている場合は、その内容を確認したうえで診療を進めます。
紹介状や検査結果があれば参考にしますが、患者さんの記憶だけでは検査方法や実施時期が分からないこともあるため、当院で必要と判断した検査は適宜行います。

他院で従来治療が行われている場合には、他にまだ試していない治療や不十分な治療があれば提案し、症状・これまでの治療歴・患者さんの希望を踏まえた上で、Li-ESWTも選択肢として検討します。
どの段階でLi-ESWTを検討する?
Li-ESWTは、特に従来治療を行っても会陰部痛や骨盤痛が残っているCP/CPPS患者さんで検討します。
海外では複数のランダム化比較試験やメタ解析が行われており、AUA 2025ではCP/CPPSに対するLi-ESWTは中等度の推奨・Evidence Grade Aと評価されています。[2]
EAUでも、ランダム化比較試験に基づき短期的な有効性が評価されています。[3]
Li-ESWTそのもののエビデンスについては、関連記事「慢性前立腺炎・CP/CPPSに衝撃波治療は効く?」で詳しく解説しています。
当院ではLi-ESWTをどのように行う?
当院の臨床研究では、次の条件でLi-ESWTを行いました。[1]
- 週1回
- 4週間
- 1回3,000発
- エネルギー密度 0.25〜0.35 mJ/mm²
- 8Hz
当院でも現在、基本的には週1回×4回を1クールとして治療しています。
当院の臨床研究では何が分かった?
当院では、従来治療を受けても症状が続いていたCP/CPPS患者19人について、Li-ESWT前後の症状をNIH-CPSIで評価しました。[1]
| 評価項目 | 治療前 | 4回治療後 |
|---|---|---|
| NIH-CPSI総スコア | 25.9 | 21.6 |
| 痛み | 11.5 | 9.2 |
| 排尿症状 | 4.3 | 3.9 |
| QOL | 10.1 | 8.5 |
NIH-CPSI総スコアは有意に改善し、特に痛みとQOLで有意な改善を認めました。
一方、排尿症状には有意な改善を認めませんでした。
また、19人中16人ではNIH-CPSIが何らかの程度改善し、6人では6点以上の改善を認めました。重篤な有害事象は認めていません。[1]
海外の臨床試験やメタ解析でも、Li-ESWTは特に疼痛の改善が目立つことが報告されています。当院の実臨床でも、同じ方向性の結果がみられました。[4]
本研究は単施設・後ろ向き観察研究であり、対照群がなく、評価期間も短い研究です。長期的な効果については、今後さらに検証が必要です。
なぜ診療成績を臨床研究として検証したのか
実際の診療では、「この治療を始めてから痛みが軽くなる患者さんが多い」という感触を持つことがあります。
しかし、診療の中で感じる手応えと、医学的に治療成績を示すことは同じではありません。
そこで当院では、倫理審査委員会の承認を受けたうえで、治療前後のNIH-CPSIを用いて診療データを解析しました。
総スコアだけでなく、痛み、排尿症状、QOLを分けて評価することで、どの症状がどの程度変化したのかを客観的に確認できます。
また、診療で得られた患者さんの情報を研究として解析・公表する場合には、患者さんの権利や個人情報への配慮、研究方法の妥当性などについて適切な手続きを踏む必要があります。
今回の研究も、独立した倫理審査委員会の承認を受けて実施し、その結果を査読のある国際医学誌へ原著論文として報告しました。[1]
当院では、実際の診療で得られた結果を客観的に確認し、その結果を次の診療へ反映していくことを大切にしています。
よくある質問
Q. 慢性前立腺炎ではどんな検査をしますか?
検尿・尿沈渣、尿培養、前立腺エコーなどを行います。
症状やこれまでの検査内容によっては、クラミジア、淋菌、Mycoplasma genitaliumなどの性感染症検査や、ウレアプラズマ検査も追加します。
Q. 最初から衝撃波治療を行いますか?
必ずしもそうではありません。
まずこれまでの検査や治療内容を確認し、未実施の検査や従来治療があれば提案します。そのうえで、症状・治療歴・患者さんの希望を踏まえてLi-ESWTも治療選択肢として検討します。
Q. 他院で慢性前立腺炎と診断されていても再検査しますか?
必要に応じて行います。
紹介状や検査結果があれば参考にしますが、検査内容や実施時期が不明な場合には、当院で必要と判断した検査を適宜実施します。
Q. 衝撃波治療は何回行いますか?
当院では基本的に、週1回×4回を1クールとして行っています。
Q. 当院の研究では、どの症状が改善しましたか?
NIH-CPSI総スコア、痛み、QOLが有意に改善しました。
排尿症状については有意な改善を認めませんでした。[1]
Q. 臨床研究として行うことにどんな意味がありますか?
治療前後を同じ指標で評価し、倫理審査を受けた研究として解析することで、どの症状がどの程度変化したのかを客観的に確認できます。
まとめ|治らないときこそ、診療の流れを一度整理する
慢性前立腺炎の治療を続けても症状が残っていると、「このままずっと治らないのではないか」と不安になる方もいると思います。
そのようなときは、新しい治療を探すだけでなく、これまで何を検査し、どの治療を行ってきたのかを整理することが大切です。
当院では、検尿、尿培養、前立腺エコー、性感染症・ウレアプラズマ検査などを症状やこれまでの診療内容に応じて適宜行います。
そのうえで、セルニルトン、α遮断薬、タダラフィル、抗菌薬、漢方薬など、従来治療でできることを提案し、症状・治療歴・患者さんの希望を踏まえてLi-ESWTも治療選択肢として検討します。
大阪梅田紳士クリニックでは、尿道炎・前立腺炎を合わせて年間1,000例以上診療しています。他院で慢性前立腺炎の治療を続けても症状が改善しない方についても、必要な検査や従来治療から、低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)まで、症状に応じた診療を行っています。
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Li-ESWTのランダム化比較試験、メタ解析、AUA・EAUガイドラインでの評価について詳しく解説しています。
参考文献
- Hirayama T, Matsuoka Y, Oae M. Low-intensity extracorporeal shockwave therapy for chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome: a retrospective single-center observational study in Japan. Transl Androl Urol. 2026;15(9):342. doi:10.21037/tau-2026-0381.
- Lai HH, Pontari MA, Argoff CE, et al. Male Chronic Pelvic Pain: AUA Guideline: Part II Treatment of Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome. J Urol. 2025;214(2):127-137.
- European Association of Urology. EAU Guidelines on Chronic Pelvic Pain. 2026 Edition.
- Labetov I, Vaganova A, Kovalev G, Shkarupa D. Extracorporeal shockwave therapy in treatment of chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome: systematic review and meta-analyses. Neurourol Urodyn. 2024;43(8):1924-1937. doi:10.1002/nau.25524.


