慢性前立腺炎が治らないのはなぜ?尿道炎・前立腺炎を年間計1,000例以上診療する泌尿器科専門医が解説|大阪梅田紳士クリニック

「慢性前立腺炎と言われて何か月も薬を飲んでいるのに治らない」

「抗菌薬を何種類も試したが、会陰部の痛みや尿道の違和感が残っている」

「症状が続いているのに、『検査では異常がないので様子を見ましょう』と言われ、どうすればよいのか分からない」

慢性前立腺炎の診療では、このような相談をよく受けます。

大阪梅田紳士クリニックでは、尿道炎と前立腺炎を合わせて年間1,000例以上診療しています。数か月から数年間治療を続けても改善せず、「このまま一生治らないのではないか」と不安を抱えて来院される方もいます。

実際にこうした患者さんを診ていると、慢性前立腺炎は単純に「前立腺の炎症がまだ残っている病気」と考えるだけでは説明できないことが少なくありません。

性感染症や膀胱炎などをきっかけに症状が始まり、感染自体は治っているのに尿道の違和感や会陰部痛だけが残る方もいます。会陰部だけではなく、臀部、大腿部、下肢のしびれを訴えたり、椅子に座っていること自体が難しかったりする方もいます。

現在、いわゆる慢性前立腺炎の多くは、慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS:Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome)として捉えられています。

感染や炎症だけでなく、骨盤底筋、末梢神経、痛みを処理する神経系、排尿機能、心理社会的要因などが関係する病態です。[1-3]

慢性前立腺炎がなかなか治らないときには、「次はどの薬を使うか」だけではなく、「今、何が症状を残しているのか」を一度考え直すことが大切です。

慢性前立腺炎は一生治らない病気ではありません

「慢性」と聞くと、それだけで「一生治らない病気なのでは」と思ってしまう方もいます。

ただ、慢性という言葉は、そのまま「治らない」という意味ではありません。

一方で、CP/CPPSは原因菌を治療すれば短期間で症状が消える感染症とは少し違います。良くなったり悪くなったりを繰り返すこともありますし、最初の原因が改善した後も痛みや違和感だけが残ることがあります。

何年間も症状が続いているからといって、前立腺に何年間も強い炎症が残っているとは限りません。

ここを誤解したままだと、「まだ炎症があるはず」「まだ菌がいるはず」と考えて、同じ治療を続けてしまうことがあります。

慢性前立腺炎が治らない6つの理由

1.感染が治っても、症状だけが残ることがある

当院で比較的よく経験するのが、性感染症や尿路感染症をきっかけに症状が始まった患者さんです。

例えば、

性感染症や膀胱炎を発症する

↓

抗菌薬で治療する

↓

検査では感染が治癒する

↓

それでも尿道の違和感や会陰部痛が続く

という経過です。

患者さんからすると、「症状があるのだから、まだ菌がいるのでは」と考えるのは自然です。

ただ、症状が残っていることと、感染が残っていることは同じではありません。

最初は感染や炎症がきっかけだったとしても、その後に骨盤底筋の緊張や神経の過敏化、慢性疼痛のメカニズムなどが関係し、感染が治った後も症状だけが続くことがあります。

症状が始まった原因と、今その症状を維持している原因が同じとは限らない、ということです。

このような状態で抗菌薬だけを変え続けても、十分な改善が得られないことがあります。

2.痛みの原因が前立腺だけとは限らない

CP/CPPSでは、骨盤底筋などの筋肉が症状に関係している患者さんもいます。

痛みが続くと、無意識に体へ力が入ります。すると筋肉が緊張し、その緊張がまた痛みにつながることがあります。

痛いから力が入る。→力が入るからさらに痛い。

こうした悪循環が続くわけです。

現在の慢性骨盤痛診療では、前立腺だけではなく、骨盤底を含めた筋骨格系まで評価することが重要とされています。[1-3]

「前立腺炎なのだから、前立腺だけを治療すればよい」とは限りません。

3.前立腺だけでは説明しにくい症状が続くことがある

慢性前立腺炎の患者さんを長く診ていると、典型的な会陰部痛だけでは説明しにくい症状に出会うことがあります。

臀部が痛い、大腿部がしびれる、足に違和感がある。中には「椅子に座っていること自体がつらく、仕事中も立っている」という方もいます。

  • 臀部が痛い
  • 大腿部がしびれる
  • 足に違和感がある

もちろん、このような症状を何でも慢性前立腺炎で説明してよいわけではありません。

腰椎疾患、末梢神経障害、股関節疾患など、別の病気がないかは確認する必要があります。

それでも他の疾患では十分に説明できず、会陰部痛などと一緒に症状が続いている場合には、慢性骨盤痛に伴う神経障害性疼痛や「感作」が関係している可能性を考えます。

感作とは、痛みが長く続くことで、神経が刺激に対して敏感になっている状態です。

最初は感染や炎症で始まった症状でも、時間がたつにつれて、痛みを感じる仕組みそのものが症状を長引かせる側に回ることがあります。

だから、尿検査や画像検査で大きな異常が見つからないからといって、「何もない」「気にしすぎ」とは言えません。

4.ストレスや生活習慣の乱れが症状を悪化させることがある

実際に診療していると、

「仕事が忙しくなった頃から悪化した」

「睡眠不足の時期は痛みが強い」

「一日中座っている日は症状がつらい」

という話を聞くことがあります。

当院の患者さんでも、強い仕事上のストレス、睡眠不足、長時間のデスクワーク、運動不足、不規則な生活などが重なっている方は少なくありません。

もちろん、これをもって「ストレスが原因です」と片付けるつもりはありません。

ただ、慢性骨盤痛は身体だけの問題ではなく、心理的・社会的な要素も含めて考えることが重視されています。いわゆるbiopsychosocial modelです。[3]

ストレスが続けば体に力が入りやすくなります。眠れなければ疲労もたまります。痛みがあることでさらに眠れなくなり、また痛みを強く感じる。

こうした悪循環は実際にあります。

薬を変えることだけに目が向いて、長時間座位や睡眠不足、生活リズムの乱れがそのままになっていれば、症状が改善しにくい方もいます。

5.同じ慢性前立腺炎でも、人によってかなり違う

慢性前立腺炎・CP/CPPSは、患者さんによって症状の出方がかなり違います。

排尿症状が中心の方会陰部痛が中心の方
射精後に悪化する方骨盤底筋の緊張が目立つ方
神経障害性疼痛の特徴が強い方

排尿症状が中心の方もいれば、会陰部痛が中心の方、射精後に悪化する方、骨盤底筋の緊張が目立つ方、神経障害性疼痛の特徴が強い方もいます。

つまり、「慢性前立腺炎ならこの薬」というほど単純ではありません。

現在の慢性骨盤痛診療では、患者さんごとの症状や病態に応じて治療を組み合わせる、多面的なアプローチが重視されています。[2,3]

同じ病名がついていても、治療すべきポイントは人によって違います。

6.治療の前に、診断そのものを見直した方がよいこともある

何年も症状が続けば、「もう何でもいいから治したい」と思うのは自然なことです。

ただ、難治性の慢性前立腺炎では、どんな治療を受けるかを考える前に、本当に慢性前立腺炎・CP/CPPSなのかを一度見直した方がよい場合があります。

会陰部痛や尿道違和感があるからといって、すべてがCP/CPPSとは限りません。

性感染症や尿路感染症、尿路結石、膀胱や前立腺の疾患、腰椎・神経疾患、骨盤底筋の異常などでも似た症状は起こります。

特に、身体への侵襲を伴う治療を検討するのであれば、その前に泌尿器科的な評価を十分に受けることが重要だと考えています。

現在、慢性前立腺炎に対しては、さまざまな自由診療も行われています。

新しい治療や自由診療そのものが悪いわけではありません。

ただし、

  • その治療にどの程度の医学的根拠があるのか。
  • 自分の症状や病態に本当に合っているのか。
  • 期待できる効果と、侵襲や合併症のリスクが見合っているのか。

ここは必ず確認しておくべきです。

主要な泌尿器科ガイドラインで標準治療として確立していない侵襲的治療もあります。

治らないと、どうしても「まだ受けていない治療」に目が向きます。

ですが、治療を足していく前に、診断やこれまでの経過をいったん整理し直した方がよいこともあります。

慢性前立腺炎が治らないとき、何を見直すのか

当院では、長期間治療しても改善しない患者さんでは、まずこれまでの経過を最初から聞き直します。

例えば、

  • 何をきっかけに症状が始まったのか
  • 性感染症や尿路感染症が先行していなかったか
  • 現在も感染を示す所見があるのか
  • 一番つらいのは痛みか、排尿症状か
  • どこに痛みや違和感があるのか
  • 座ると悪化するのか
  • 射精すると悪化するのか
  • 仕事や睡眠、生活習慣と症状に関連がないか
  • 骨盤底筋や神経系の関与が考えられないか
  • 他の疾患で説明できないか

といった点です。

当院では、尿道の違和感や排尿時痛などの症状が続いている場合、淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ジェニタリウムなどの一般的な性感染症に加え、必要に応じてウレアプラズマについても確認しています。

ウレアプラズマと慢性前立腺炎との関連については以前から議論があり、過去には前立腺由来と考えられる形でUreaplasma urealyticumが検出された症例も報告されています。一方、近年の比較研究では、慢性前立腺炎患者と非慢性前立腺炎患者との間でU. urealyticumやUreaplasma parvumの検出率に有意差は認められていません。

そのため、ウレアプラズマが慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)の一般的な原因であるとは考えられていませんが、尿道炎様の症状が残っている患者さんでは、念のため感染症を除外する目的で検査を行うことがあります。

ただし、ウレアプラズマは無症状の男性からも検出されるため、陽性というだけで現在の症状の原因とは判断しません。尿検査の炎症所見、症状、これまでの経過などを含めて総合的に評価します。

ここを整理すると、「これまでずっと感染を治療していたが、今困っている症状は痛みだった」「排尿症状より座位痛の方が問題だった」といったことが見えてくることがあります。

症状の客観的な評価には、NIH-CPSI(National Institutes of Health Chronic Prostatitis Symptom Index)も有用です。

疼痛、排尿症状、QOLへの影響を分けて評価できるため、「何が良くなって、何が残っているのか」を整理するのに役立ちます。

難治例ではLi-ESWTも選択肢の一つ

従来の治療で十分な改善が得られないCP/CPPSに対しては、低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)も選択肢の一つです。

EAUガイドラインでも、前立腺痛症候群に対する体外衝撃波治療について、短期的な症状改善を示すエビデンスが取り上げられています。[3]

大阪梅田紳士クリニックでは、6か月以上の保存的治療で症状が残存したCP/CPPS患者19例にLi-ESWTを行った治療成績を、2026年に国際医学誌『Translational Andrology and Urology』に報告しました。[4]

評価項目結果
NIH-CPSI総スコア25.9から21.6へ有意に改善
疼痛・QOL改善を認めました
排尿症状有意な改善を認めませんでした

治療後、NIH-CPSI総スコアは25.9から21.6へ有意に改善し、疼痛とQOLでも改善を認めました。一方、排尿症状については有意な改善を認めませんでした。[4]

ただし、19例の単施設・後ろ向き観察研究であり、対照群もありません。すべての患者さんに同じような効果が得られるという意味ではありません。

むしろこの結果からも、慢性前立腺炎では症状を一括りにせず、「何がつらいのか」「何を治療するのか」を分けて考える必要があると感じています。

なお、衝撃波治療のエビデンスについてもっと詳しく知りたい方は、下記のコラムも参照ください。

慢性前立腺炎・CP/CPPSに衝撃波治療は効く?AUA・EAUガイドライン、臨床試験、当院19例の治療成績をもとに、Li-ESWTの効果・治療回数・安全性・カテーテル治療との違いを泌尿器科専門医が解説します。

よくある質問

Q. 性感染症が治ったのに、尿道や会陰部の違和感があります。まだ菌がいるのでしょうか?

必ずしもそうではありません。

当院でも、性感染症の治療後に検査が陰性になったにもかかわらず、尿道の違和感や会陰部痛が残る方を診療します。

まず現在の感染の有無を確認し、感染が否定的であれば、CP/CPPSなど別の病態を考える必要があります。


Q. 抗菌薬を何度飲んでも治らないのはなぜですか?

現在の症状の主な原因が、すでに感染ではなくなっている可能性があります。

抗菌薬を繰り返しても改善しない場合には、「もっと強い抗菌薬」を考える前に、今も感染があるのか、何が症状を残しているのかを見直すことが大切です。


Q. 足のしびれや臀部の痛みも慢性前立腺炎と関係しますか?

CP/CPPSの患者さんの中には、骨盤以外にも痛みや感覚異常を訴える方がいます。

ただし、腰椎疾患や末梢神経障害などでも同じような症状は起こります。すべてを慢性前立腺炎と考えず、他の原因がないかを確認する必要があります。


Q. ストレスが原因なのでしょうか?

ストレスだけが原因とは考えていません。

ただ、強いストレス、睡眠不足、長時間座位などが続くと、筋緊張や痛みの感じ方に影響し、症状が悪化する方はいます。

実際の診療でも、症状が悪化した時期と仕事や生活環境の変化が重なっている方は少なくありません。


Q. 検査では異常なしと言われました。それでも痛いのは気のせいですか?

いいえ。

一般的な尿検査や画像検査だけでは、骨盤底筋の異常や慢性疼痛に伴う神経系の変化まですべて確認できるわけではありません。

検査で明らかな異常が見つからないことと、症状が存在しないことは別です。


Q. 何年も治らない場合、もう治療法はありませんか?

治療期間が長いからといって、治療の選択肢がなくなるわけではありません。

むしろ同じ治療を長期間続けても改善していない場合には、これまでの経過や診断、治療内容を一度整理し直す価値があります。

まとめ|治らないときこそ、これまでの経過を一度整理する

慢性前立腺炎が長引いている患者さんを診ていて感じるのは、「まだ前立腺に炎症がある」と考えるだけでは説明できないケースが少なくないということです。

最初は性感染症や膀胱炎がきっかけだったとしても、数か月後、数年後まで残っている痛みや違和感が、同じ原因で続いているとは限りません。

骨盤底筋の緊張が関係していることもありますし、痛みが長引いたことで神経が過敏になっていることもあります。仕事のストレスや睡眠不足、長時間座位などが症状を悪化させている方もいます。

一方で、しびれや強い座位痛などがあれば、慢性前立腺炎だけに原因を求めず、別の病気がないかも確認する必要があります。

だからこそ、治らないときには薬を足していくことだけを考えるのではなく、一度これまでの経過を整理して、「今、何が症状を残しているのか」を考え直すことが大切だと思います。

大阪梅田紳士クリニックでは、尿道炎と前立腺炎を合わせて年間1,000例以上診療しています。

慢性前立腺炎・CP/CPPSについても、これまでの感染症歴、検査結果、治療内容、痛みの部位、生活背景まで確認したうえで、治療方針を検討しています。

薬物療法などの一般的な治療に加え、従来治療で十分な改善が得られない患者さんには、低強度体外衝撃波治療(Li-ESWT)も提供しています。

「感染症は治ったと言われたのに症状だけが残っている」

「抗菌薬を繰り返しても改善しない」

「検査では異常がないのに痛みが続いている」

「長時間座ることさえつらい」

という方は、同じ治療を繰り返すだけでなく、一度診断と治療の組み立てを見直してみることも大切です。

▼論文の詳細はコチラ

https://doi.org/10.21037/tau-2026-0381

参考文献

  1. Lai HH, Pontari MA, Argoff CE, et al. Male Chronic Pelvic Pain: AUA Guideline: Part I Evaluation and Management Approach. J Urol. 2025;214(2):116-126. doi:10.1097/JU.0000000000004564.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40243110/
  2. Lai HH, Pontari MA, Argoff CE, et al. Male Chronic Pelvic Pain: AUA Guideline: Part II Treatment of Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome. J Urol. 2025;214(2):127-137.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40243102/
  3. European Association of Urology. EAU Guidelines on Chronic Pelvic Pain. 2026 Edition.
    https://uroweb.org/guidelines/chronic-pelvic-pain
  4. Hirayama T, Matsuoka Y, Oae M. Low-intensity extracorporeal shockwave therapy for chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome: a retrospective single-center observational study in Japan. Transl Androl Urol. 2026;15(9):342. doi:10.21037/tau-2026-0381.
    https://tau.amegroups.org/article/view/160611
  5. Ohkawa M, Yamaguchi K, Tokunaga S, Nakashima T, Fujita S. Ureaplasma urealyticum in the urogenital tract of patients with chronic prostatitis or related symptomatology. Br J Urol. 1993;72(6):918-921. doi:10.1111/j.1464-410X.1993.tb16297.x.
  6. Park H, Lee G. Roles of Ureaplasma Species in Idiopathic Chronic Prostatitis: A Case-Control Study. World J Mens Health. 2019;37(3):355-363. doi:10.5534/wjmh.180081.