「バイアグラは突然死するから危険」は誤解?
心臓に負担をかけないための注意点とは

「バイアグラで突然死する」という噂は誤解です。

  • バイアグラ突然死したと聞いたことがあるから怖い」
  • 心臓の持病があるのでED治療薬を使っても良いのか心配」
  • ED治療薬を使ってはいけないのはどんな人か知りたい」

このようなお悩みにお応えする記事をご用意しました。

結論からいうと、バイアグラの正規品をはじめとした国内に正式に流通しているED治療薬を服用すること自体で、心臓の負担になることはまずありません

では、なぜ「バイアグラを飲むと心臓に負担がかかって突然死する」といった誤解が生まれたのでしょうか。

この記事を読むことで、バイアグラを含むED治療薬を安全に使用するための注意点を知ることができます。

「バイアグラで突然死」のウワサの真相

1998年3月末に最初にバイアグラが発売された米国では、発売から7ヶ月の間に報告された死亡例のうち、服用後数時間~数日以内に死亡した人の7割以上に、元から冠状動脈疾患の危険因子(高血圧、高コレステロール血症、喫煙、糖尿病、肥満、心疾患の既往歴)が1つ以上有ったと報告されています。

(記事引用:https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/viagra/tp0424-2.html

日本国内でも1998年に、性行為中に死亡した症例の男性がバイアグラを飲んでいたというケースがありました。この男性は高血圧、糖尿病、不整脈の治療中で、なおかつ現在ED治療薬とは併用禁忌となっているニトログリセリン貼付剤等を使用中だったことが分かっています。

(記事引用:https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1007/h0715-2.html

このようにバイアグラ服用後に亡くなったと言っても、そのほとんどが「心血管系のリスクが高い状態で性行為を行ってしまった人」であり、さらに「ニトログリセリンのような併用禁忌の薬を使用中なのにバイアグラを服用してしまった人」までいました。

にも関わらず、そのような周辺情報が充分に報じられることはな「バイアグラを服用したあとに亡くなったのだから突然死のリスクがある」という誤解が広まってしまいました

バイアグラは、もともと狭心症の治療薬として開発されていたものが最終的にED治療薬として採用されたもので、主な作用は血管を拡張しやすくすることです。この作用は血圧を下げるため、むしろ心臓の負担を軽減する方に働くと考えられます。

ですが、そもそも性行為自体が血圧と心拍数を上昇させて心臓に負担をかける行為です。狭心症など心臓の疾患がある人は、「ED治療薬を使用しても良いか」ということ以前に、まず「性行為をしても問題ないか」を主治医に確認しておくことが大切です。

もともと動脈硬化や心臓の治療を行っている場合は、その治療薬の飲み合わせなどによりED治療薬を使用できないこともありますから、処方を受ける際は医師によく確認しておかなければなりません。

バイアグラの禁忌事項|特に硝酸剤は要注意

医薬品の禁忌事項には、そのお薬を使用してはいけない人や、併用してはいけないお薬などが書かれています。

日本国内で正式に流通しているED治療薬には大きく分けてバイアグラ(シルデナフィル)レビトラ(バルデナフィル)シアリス(タダラフィル)の三種類がありますが、ここではバイアグラの場合を例に挙げて見ていきましょう。

バイアグラの禁忌事項は主に血管系の疾患の既往歴に関するものが多いです。以下に代表的なものを挙げます。

バイアグラの禁忌事項

  • バイアグラにアレルギー反応を起こしたことがある
  • 心臓の病気などで硝酸剤または一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン等)を使用中
  • 心血管系障害などの理由で、医師から性行為を止められている
  • 重度の肝機能障害がある
  • 重度の低血圧、高血圧症なのに治療を継続して受けていない
  • 最近6ヵ月以内に脳梗塞・脳出血や心筋梗塞を起こした

ほかに、網膜色素変性症の人やアミオダロン塩酸塩(経口)・リオシグアト・その他の併用禁忌とされる薬を使用中の人もバイアグラを使用できません。

次は、ED治療薬と一緒に飲んではいけない「硝酸剤」について解説します。

【併用厳禁】バイアグラと硝酸薬は一緒に飲めません

バイアグラなどのED治療薬(PDE5阻害薬)と併用できない禁忌薬のうち、最も代表的なものに「硝酸剤・一酸化窒素(NO)供与剤」があります。

硝酸剤を含む薬剤として代表的なものには、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコランジルなどがあります。先発品の場合、これら一般名とは異なる商品名で呼ばれることがありますので、併用薬の確認の際は注意してください。

硝酸剤は、狭心症や心筋梗塞などの心疾患の治療薬として使用されます。全身または心臓に酸素を運ぶ冠動脈の血管を広げることで、心臓が血液を送るための負担を減らすのが主な作用です。血管を広げると血圧が下がることになります。

硝酸剤とは用途は異なりますが、ED治療薬にも血管を拡張させる作用があります。併用してしまうと過度な血圧低下を招いてしまい、生命に関わるような重篤な状態になることもあります。

このように、併用禁忌の薬を使用している場合は、ED治療薬を使用することは非常に危険です。

現在治療中の疾患があり、治療薬とバイアグラの飲み合わせが不安な場合は事前にかかりつけ医に相談することをおすすめします。

非正規品・個人輸入品にはリスクがあります。

ED治療薬は、国内で正規に流通している先発品および後発品(ジェネリック)であれば、上記の禁忌事項に注意を払ってさえいれば比較的安全に使用できるお薬です。

しかし、それは正規品に限った話。非正規品や個人輸入品はその限りではありません。

非正規品や個人輸入品は偽物のリスクがあり、さらに正規品の主成分とは異なる薬剤や、精力剤と称して詳細が不明瞭な成分が混入している場合もあります。

それらの異物の副作用や普段あなたが使用している医薬品との相互作用によって思わぬ健康被害を受けることがあります。

非正規品や個人輸入品のED治療薬を取り扱っているような、クリニックを自称する販売業者にはくれぐれもご注意ください。

心臓病患者がED治療薬を使うときに確認すること3選

ED治療薬の使用自体が心疾患のリスクにはならないものの、心臓などの既往歴がある方や治療薬を服用している場合は注意が必要です。

心臓病の人がED治療薬を使う際に特に注意する必要があるのは以下の3つです。

  • 性行為の負荷に耐えられる病状かどうか
  • 硝酸剤など併用禁忌薬を使っていないか
  • パートナーにバイアグラの使用を伝えておく

その理由を順番に解説していきます。
 

性行為は全力疾走に匹敵する激しい運動であること

先程も述べましたが、性行為は血圧と心拍数を上昇させて心臓に負担をかける行為です。

パートナーや夫婦間など、いつもの相手との性行為でさえ、絶頂時には階段を1階から3階まで一気に上がった時と同等の身体活動量と言われており、パートナー以外との性行為では、精神的興奮や自律神経の緊張状態が関与して、さらに大きな心拍数と血圧の上昇が見られたという報告もあります。

また、性行為中の心筋梗塞のリスクは、安静時と比べると 2.7倍に増加することがわかっています。

健康な人であれば、多少強度の高い運動をしても問題ないでしょうが、心臓の病気など心血管系のリスクがある人では注意が必要となります。

このような「性行為自体の負荷」に加え、下記のような要素が影響し合うことで心臓の負担となります。

  • 糖尿病や高血圧症・脂質異常症などの基礎疾患
  • アルコールの摂取
  • ED治療薬(PDE5阻害薬)の服用

性行為の負荷に身体が耐えられるのかについても医師からアドバイスを受けることは大切です。

硝酸剤を含む薬剤を飲んでいないか

バイアグラをはじめとするED治療薬の禁忌事項として「硝酸剤の使用」を挙げました。

両者とも血管を拡張させる作用があるため、一緒に飲むことで命にかかわるほどの急激な血圧低下を起こしてしまう可能性があります。

糖尿病、心臓病など、生活習慣病に関連する治療を受けている場合は飲んでいる薬とED治療薬の飲み合わせについて確認しておきましょう

パートナーにED治療薬を使っていることを伝える

万が一、性行為中に心臓発作が起きたときのために、あなたがED治療薬を服用していることをパートナーに伝えておくことが大切です。

なぜなら、発作が起きて救急隊を呼んだときに、まず最初に応急処置として硝酸剤が投与されるからです。

発作を起こしたあなたは言葉を発することはできません。

つまり、パートナーにバイアグラを服用していることを知らせていなければ、救急隊が知るすべはありません。

繰り返しになりますが、バイアグラを飲んだ身体と硝酸剤が併用されることになるので、血圧が下がり過ぎて、最悪の場合、死に至ることもあります。

まとめ

この記事では「バイアグラと性行為中の突然死の関連性」について解説しました。

記事でも述べたように、バイアグラなどのED治療薬が直接、突然死の原因になることはないので安心して使用してください

ただし、脳血管障害や心疾患の既往があったり、現在治療をしている方は注意が必要です。

その理由は、治療薬の血管拡張作用がバイアグラの薬効と重複し、急激な血圧低下を招く可能性があるからです。

また、服用中の薬とバイアグラの飲み合わせだけでなく、自分の身体が性行為自体の負担に耐えられるかについて、医師と相談されることをオススメします。

そして万が一心臓発作が起きた場合に救急で硝酸剤を投与されることを防ぐために、パートナーにバイアグラの使用を打ち明けておくことです。

ED治療薬の個人輸入は避け、性行為が可能かどうかを含めて医師のアドバイスを受けてみると良いでしょう。

ED治療薬をはじめ、様々な対応が可能です。

当院では、ED治療薬の処方はもちろん行っておりますが、今回解説した心血管系の病気や、加齢などの影響により、EDの症状が進行し、内服薬が効きづらくなってしまった患者様もいらっしゃると思います。

当院では、このような患者様のために、衝撃波で血管の新生を促しEDを根本から改善する方法や、陰茎海綿体自己注射など様々な治療法をご用意しています。

さらに、EDの原因についての検査・治療など総合的な対応を行うことも可能です。

男性ホルモンの一種テストステロンや性機能に関わるホルモンバランスの検査をはじめとして、EDの精神的要因と関わりのある自律神経のバランスを計測する検査の実施、睡眠時無呼吸症候群の検査をして必要な場合は保険診療による治療を実施することもできます。

検査の結果、より専門的な治療が必要な場合には提携医療機関の紹介も実施しており、様々な対応が可能です。

当院のED診療について