ED治療薬はどれがいい?医師が比較して解説!

ED治療薬はどれを選べばいい?

ED治療薬は大きく分けてバイアグラ・レビトラ・シアリスの三種類

患者さんから、よく「バイアグラ、レビトラ、シアリスの中で、どれが一番よく効きますか?」と質問されることがあります。ここでは、そういった患者さんの質問にお答えする意味で、バイアグラ・レビトラ・シアリス3種類のPDE5阻害薬の有効性や安全性に関するいくつかの論文や発表について、お話していきたいと思います。

日本国内未認可の種類・容量のED治療薬にご注意

日本国内で承認され発売されているのはバイアグラ(シルデナフィル)レビトラ(バルデナフィル)シアリス(タダラフィル)3種類だけです。海外では他にアバナフィル・ウデナフィル・ロデナフィル・ミロデナフィルと言った種類のED治療薬(PDE5阻害薬)が存在していますが、米国のFDAおよび欧州医薬品庁(EMA)でも、バイアグラ・レビトラ・シアリスにアバナフィルを加えた4種類までしか承認していません。また、バイアグラ(シルデナフィル)海外では100mgまでありますが、日本国内では50mgまでしか認可されていません。

日本国内未承認の種類・容量のお薬を処方している、「クリニックを自称する販売業者」もあるようですが、日本国内でED治療薬の処方を受ける場合はこういったお薬は選択肢に入れない事をおすすめします。

種類ごとの有効性や安全性に大きな違いはない

国際性医学学会(ISSM)の公式見解において、また同学会の協議会であるInternationalConsultation for Sexual Medicine (ICSM)の2015年の報告(※1)においても、「現在までに3剤の有効性や嗜好性を直接比較するための有用な二重盲検や三重盲検試験は行われておらず、PDE5阻害薬製剤間に有効性や安全性の有意な差はない」と結論されています。日本国内でも、PDE5阻害薬3剤の処方されている割合や、嗜好性に関する研究はあるものの、他剤との有効性の比較を検討した前向きな研究は施行されていません。したがって、ガイドラインの根拠となる研究は海外の報告となります。このような研究では、バイアグラ(シルデナフィル)は100mgまで使用されていますが、わが国では50mgまでであるという点も考慮して見ていきます。

直接比較した大規模試験はないものの、複数の論文や研究結果を統合したメタアナリシスという手法による分析結果がいくつか存在します。有効率と安全性について調査した2015年のメタアナリシス(※2)の結果(有効性については82研究47、626名を対象)では、最も有効率の高い薬剤はシルデナフィル50mgで、最も安全性の高い薬剤はタダラフィル10mgであったことが示されています。また、2013年のメタアナリシス (※3、118研究31、195名を対象)では最も有効率の高い薬剤は、タダラフィルという結論になっていますが、2009年のもの(※4、130の無作為化比較試験を対象)ではPDE5阻害薬間に有効率の差はないとされています。上記のように研究結果が一定でない理由は、選択された研究の規模、あるいは薬剤の用量の考慮の相違によるものと考えられています。

被験者に最も好ましいものを選んでもらう”嗜好性についての研究”も複数報告されてはいるものの(※5、6)、ほとんどの研究でいずれかの製薬会社が資金提供をしているため、偏りが無いとは言えず、結論は難しいとされています(※7)。その意味で、インターネット上での調査ではありますが、わが国において実施されたスポンサーがない中立性の高い研究(※8)では、自己評価、対人関係性のスコアは、タダラフィルが使用症例において最も良い値を示していました。他にスポンサーがない研究としては、2006年に報告されたクロスオーバー試験(※9)の結果があります。90名と症例数は少ないものの、全症例に3剤を少なくとも6回使用してもらい、異なる薬剤の試験への移行には1週間の休止期間を設けていました。治療効果は3剤いずれも良好でしたが、治療後に嗜好性を尋ねたところ52.2%の症例がタダラフィルを選択したという結果となりました。

EDの病状を悪化させる病気は様々ありますが、ご自身の持病に合わせて、より有効性の高いED治療薬を選択する必要があるのではとお思いになるかも知れません。これに関しても、3剤すべてにおいて前立腺全摘除術後、糖尿病、脊髄損傷、うつ病などの疾患をもつED患者を対象とした複数の臨床研究が報告されており、3剤ともその有効性が認められています(※1)。各疾患に対するPDE5阻害薬の有効性に関するレビューやメタアナリシスは存在しますが、やはり3剤の直接比較試験が存在しないため、3剤のうちどれか一つを強く推奨する根拠が存在しません

結論としては、どのPDE5阻害薬も有効性や安全性が確認されており、「他の薬剤より優れていて副作用が少ない」と言える根拠は存在しない、ということです。いずれのレビューやガイドラインにおいても、PDE5阻害薬を使用する患者に対して、各薬剤の有効性持続時間や、長所・短所などを説明する重要性が記載されています。

ご自身のお薬との相性や使用タイミング、費用に応じた選択を

冒頭の「バイアグラ、レビトラ、シアリスの中で、どれが一番よく効きますか?」という質問については、私の方からは「特にお勧めがあるわけではありませんが、それぞれ特徴が異なるので、ご自身が使いやすいと思うものを、そして実際に服用してみて自分に合うものを使っていくのが良いでしょう」とお答えしています。
従って、まず最初にPDE5阻害剤を服用する場合は、三種類とも色々試してみてもらった上で、患者さん一人一人の個々の性活動のタイミングや頻度、個人の好みに合ったものを、ご自身で探していってもらうのが良いと考えています。

また、ED治療薬を選ぶ際は、服用頻度やコストパフォーマンスも重要な要素と言えるでしょう。例えば、月に1~2回程度と、使用頻度の少ない人であれば、バイアグラやレビトラのようにすぐに作用するお薬の方が、タイミングがはかりやすく、コストを抑えることができるため適していると言えます。逆に、 週に1回以上使用する人であれば、シアリスのように長時間(約36時間)作用する薬の方が少ない錠数で済む可能性があります。特に週末など、日をまたいで長時間の効果を求める場合に最適で、「ウィークエンドピル」と呼ばれることもあります。

さらに費用を重視するのであれば、ジェネリック医薬品(後発医薬品)を検討することで、コストを大幅に削減できます。日本国内では、バイアグラ、レビトラ、シアリスの3種類とも、ジェネリック医薬品が発売されています。日本国内で認可されているジェネリック医薬品は比較的安全性が確保されているため、先発医薬品と同等の効果が期待できますので、保険診療外であるED診療においては、ジェネリック医薬品の方が、経済的なメリットはあると言えます。

ED治療薬以外にも、様々な対応が可能です。

当院では、今回ご紹介したようなED治療薬の処方はもちろん、衝撃波で血管の新生を促しEDを根本から改善する方法や、幹細胞培養上清液治療陰茎海綿体自己注射など様々な治療法をご用意しています。

さらに、EDの原因についての検査・治療など総合的な対応を行うことも可能です。

男性ホルモンの一種テストステロンや性機能に関わるホルモンバランスの検査をはじめとして、EDの精神的要因と関わりのある自律神経のバランスを計測する検査を実施したり、睡眠時無呼吸症候群の検査をして必要な場合は保険診療による治療を実施したりできます。検査の結果、より専門的な治療が必要な場合には提携医療機関の紹介も実施しており、様々な対応が可能です。

当院のED診療について

(1) Hatzimouratidis K. Salonia A. Adaikan G, et al : Pharmacotherapy for erectile dysfunction : recommendations from the Fourth International Consultation for Sexual Medicine (ICSM 2015). J Sex Med 13: 465-488. 2016

(2) Chen.Staubli SE. Schneider MP. et al : Phosphodiesterase 5 inhibitors for the treatment of erectile dysfunction : a trade-off network meta-analysis. Eur Urol 68: 674-680, 2015

(3) Yuan J. Zhang R. Yang Z, et al : Comparative effectiveness and safety of oral phosphodiesterase type 5 inhibitors for erectile dysfunction : a systematic review and network meta-analysis. Eur Urol 63: 902-912, 2013

(4) Tsertsvadze A. Fink HA. Y azdi F, et al : Oral phosphodiesterase-5 inhibitors and hormonal treatmen ts for erectile dysfunction : a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med 151: 650-661, 2009

(5) Bai W. Li HJ, Dai YT, et al : An open-label. multicenter, randomized. crossover study comparing sildenafil citrate and tadalafil for treating erectile dysfunction in Chinese men na’ive to phosphodiesterase 5 inhibitor therapy. Asian J Androl 17: 61-67, 2015

(6) Mirone V, Fusco F, Rossi A, et al : Tadalafil and vardenafil vs sildenafil : a review of patient-preference studies. BJU Int 103: 1212-1217, 2009

(7) Smith WB 2nd, McCaslin IR, Gokce A, et al : PDE5 inhibitors : considerations for preference and long-term adherence. Int J Clin Pract 67: 768780, 2013

(8) Tsujimura A, Kiuchi H, Soda T, et al : Sexual life of Japanese patients with erectile dysfunction taking phosphodiesterase type 5 inhibitors : an internet survey using the Psychological and Interpersonal Relationship Scales-Short Form questionnaire. Int J Urol 21: 821-825, 2014

(9) Tolra JR, Campana JM, Ciutat LF, et al : Prospective, randomized, open-label, fixed-dosecrossover study to establish preference of patients with erectile dysfunction after taking the three PDE-5 inhibitors. J Sex Med 3: 901-909, 2006