白血病ウイルス1型HTLV-1とは?
HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)はレトロウイルスというウイルスの一種で、基本的には一度感染すると生涯感染が持続します。他のレトロウイルスとして有名なウイルスはHIVになります。HIVは以前HTLV-3と呼ばれていたこともあるぐらいです。
HTLV-1と関連する病気として比較的有名なものとしては以下のようなものがあります。
- 成人T細胞白血病(ATL)およびリンパ腫:血液がんの白血病および予後不良)
- HTLV-1関連脊髄症(HAM):神経難病で足がしびれてきたりする
- HTLV-1関連ブドウ膜炎:目が見えにくくなったりする
また、それ以外にもHTLV-1と関連があるのかどうかはっきりしないような疾患も多くあります。例えば最近の論文でHTLV-1感染者の方が非感染者よりも死亡リスクが高いとする報告があり(Lancet Infect Dis 2020 Vol. 20 Issue 1 Pages 133-143、一言で言うと寿命が短い)、そのデータベースでHTLV-1感染者に患者さんが多いとされた疾患は、湿疹(小児)、気管支拡張症、気管支炎・細気管支炎、喘息(男性)、線維筋痛症、関節リウマチ、関節炎、結核、腎・膀胱感染、皮膚糸状菌症、肺炎、糞線虫過剰感染症候群、肝がん、ATL以外のリンパ腫、子宮頸がんなど非常に多岐に亘りました。つまり、こういった疾患とHTLV-1が関連しているのかもしれないということになります。
HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)は性行為により感染するリスクがあります。
HTLV-1は母子感染が着目されてきましたが、母子感染のコントロールが行政でも進められる一方で、水平感染に関してはほとんど対策が行われてきませんでした。水平感染と言いますと現在では性感染になります。HIVと同じように性交渉で感染するということです。例えば、母子感染で注目された母乳以外にも精液、膣分泌液、血液にもリンパ球が含まれており、リンパ球に潜んでいるHTLV-1が水平感染を起こしてしまうわけです。それらを避けるように性交渉を行なえば感染のリスクは低減できます。このように性感染症のリスクの高い方はHTLV-1感染の高リスクともいえると思いますが、これまで特にこのウイルスの感染の有無を調べる検査を勧められるようなことはなかったのではと思います。
HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)感染の有無は、血液検査で調べることができます。
従来HTLV-1はATLやHAMなど難治の疾患を発症する一方で実際に発症するのは一部であったり発症を予防することができない為に、HTLV-1が陽性であるとわかってもあまり対応することがないとして妊婦や献血者以外ではその感染の有無を検査することはありませんでした。しかし、上述のように色々な疾患のリスクが高くなるとするとどうでしょうか。一度調べておいた方が何か異常が出てきたときに診断が付きやすいということもあるかもしれません。それなら少しの採血で検査できるのならと感じられる方も多いのではないでしょうか。
当院でも検査を実施しております。このコラムを読んでHTLV-1感染について不安があり検査をしてみたいと思った方は、是非一度受診してください。当院ではブライダルチェックという形で、性行為で感染するおそれのある病原体についての検査を行っております。結婚をお考えの方以外でも検査を受けることが可能です。ブライダルチェックについて詳しくは以下のページをご覧ください。また、HTLV-1単体での検査も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。