ED診療ガイドライン(第3版)によると、ED(ErectileDysfunction、勃起不全)という病気の治療の第一選択は、本項でご紹介するシアリス 🄬や、バイアグラ🄬・レビトラ 🄬 に代表される、PDE5(phosphodiesterase5、ホスホジエステラーゼ5)阻害薬であると言われています。
PDE5阻害薬の詳しい解説は第一回・バイアグラ(シルデナフィル)編でも述べていますので、よろしければご覧ください。
ED治療薬について詳しく効果・種類を解説。第一回・バイアグラ(シルデナフィル)編タダラフィルは、内服後30分~60分くらいから効果を発揮し、36時間効果が持続します(※1)。この長時間持続する効果が、タダラフィルと他の2剤シルデナフィル・バルデナフィルとの大きな違いです。また、本薬剤はPDE11にも阻害作用を有しているのが特徴です。PDE11は主に前立腺、精巣、骨格筋に存在しますが、それを阻害することによる影響はよく解明されていません。
日本国内においては、シアリス🄬錠が日本イーライリリー株式会社から2007年から製造販売され、5mg、10mg、20mgの3種類があります。シアリス🄬先発品の製造販売は、2020年4月に日本イーライリリーから日本新薬に承継されました。パッケージなどに印字されている会社名も変更となっています。日本新薬は2009年からシアリスの販売権を取得しており、新たに製造についても権利を取得した形です。
現在シアリスの国内での特許は満了を迎えており、国内の9社ほどからシアリスのジェネリック医薬品であるタダラフィル錠が、製造承認を得て発売されています。
タダラフィル の有効性と安全性に関するエビデンスについても、多数の論文が存在します。以下にその一部をご紹介します 。
5つの無作為化比較試験(RCT) をまとめた論文(※2)によると、軽度・中等度EDの1,112名のデータでは、タダラフィルを服用した患者の41 ~ 81 %が勃起の改善を認め(偽薬を服用したプラセボ群は35%)、しかも内服後30分から36時間の間で性交機会の73~80%で性交が可能であったことが示されています。
安全性については、本薬剤に特徴的な副作用は背部痛であり、5% に発生していますが、その原因ははっきりと分かっていません。精巣にPDE11が存在することから、造精機能やホルモンに対する影響を懸念するかもしれませんが、45歳以上のED患者191名の9ヵ月の研究(※3)によって造精機能には異常をきたさないことが示されています。
心筋梗塞や脳梗塞などに代表される心血管系の病気の発現(心血管イベント)に関しては、プラセボとの二重盲検試験およびオープン試験(タダラフィル群12,487名、プラセボ群2,047名)を合計して検討した論文があります(※4)。それによると、心血管イベントの発生率は、1年間にタダラフィル群で0.40%、プラセボ(偽薬)群で0.48%の患者に発生し、有意な差がありませんでした。
日本での臨床試験の成績はED患者343名をプラセボ群、タダラフィル5mg群、10mg群、20mg群に割り付け.有効性および安全性について検討したものがあります(※5)。その中で有効性については、IIEFと呼ばれるEDの問診票における勃起機能ドメインスコア、および患者日誌中の性交に関する質問(Sexual Encounter Profile : SEP)の質問2「腟への挿入ができましたか?」、質問3「勃起は十分に持続し、性交に成功しましたか?」に対し“はい”と回答した割合のベースラインからの変化量で評価されています。その結果、すべての評価項目において.タダラフィル5mg、10mg、20mgすべての用量でプラセボと比較して有意な改善を認め、日本人ED患者におけるタダラフィルの有効性が証明されました。この中で重症ED患者における部分集団解析においては、IIEF、SEPの質問2、3のいずれの変化量も用量依存的な改善が認められ、特に20mg群で最も大きな改善を認めました。
国内臨床試験でタダラフィルを投与した257名における主な副作用は、頭痛29名(11.3%)、ほてり22名(8.6%)、消化不良6名(2.3%)などで、ほとんどの事象が軽度から中等度でした。
タダラフィル5mgの連続投与(ザルティア🄬錠5mgによるもの)は前立腺肥大症の治療薬として2014年4月に認可されています。これについては、欧米でのプラセボ対照試験において、下部尿路症状を有するED患者の勃起機能改善に有効であったと報告されています(※6)。
当院では、今回ご紹介したようなED治療薬の処方はもちろん、衝撃波で血管の新生を促しEDを根本から改善する方法や、再生医療の一環である幹細胞培養上清液治療、陰茎海綿体自己注射など様々な治療法をご用意しています。
さらに、EDの原因についての検査・治療など総合的な対応を行うことも可能です。
男性ホルモンの一種テストステロンや性機能に関わるホルモンバランスの検査をはじめとして、EDの精神的要因と関わりのある自律神経のバランスを計測する検査を実施したり、睡眠時無呼吸症候群の検査をして必要な場合は保険診療による治療を実施したりできます。検査の結果、より専門的な治療が必要な場合には提携医療機関の紹介も実施しており、様々な対応が可能です。
(1) Porst H : IC351 (Tadalafil. Cialis) : update on clinical experience. Int J Impot Res 14: S57-S64、 2002
(2) Brock GB、 McMahon CG、 Chen KK、 et al : Efficacy and safety of tadalafil for the treatment of erectile dysfunction : results of integrated analyses. J Urol 168: 1332-1336、 2002
(3) Hellstrom WJ、 Gittelman M、 Jarow J、 et al : An evaluation of semen characteristics in men 45 years of age or older after daily dosing with tadalafil 20 mg : results of a multicenter、 randomized、 double-blind、 placebo-controlled、 9-month study 11dy.Eur Urol 53: 1058-1065、 2008
(4) K loner RA. Jackson G、 Hutter AM. et al : Cardio・asucular safety update of tadalafil : retrospective anaiysis of data from placebo-controlled and openlabel clinical trials of tadalafil with as needed、 three times-per-week or once-a-day dosing. Am J Cardiol 97: 1778-1784、 2006
(5) Nagao K、 Kimoto Y、 Marumo K、 et al : Efficacy and safety of tadalafil 5、 10、 and 20 mg in Japanese men with erectile dysfunction : results of a multicenter、 randomized、 double-blind、 placebo-con trolled study. Urology 68: 845-851. 2006
(6) Egerdie RB、 Auerbach S、 Roehrborn CG、 et al : Tadalafil 2.5 or 5 mg administered once daily for 12 weeks in men with both erectile dysfunction and signs and symptoms of benign prostatic hyperplasia : results of a randomized、 placebo-controlled、 double-blind study. J Sex Med 9: 271-281. 2012